病気になってしまう前にできること、それが予防処置です。
健康な歯を守る取り組みをご紹介します。
予防処置とは
ご自身の歯を長く丈夫に使い続けるためには、なんといっても予防が重要です。一度虫歯治療で削った歯の寿命は、短くなるといわれています。歯を支える歯槽骨も、重い歯周病で溶かされてしまうと、自然に再生することはありません。口内の病気はどんな優れた治療で機能を回復させても、完全に元通りに再生するわけではないので、予防処置で病気にしないことには敵わないのです。
予防のためにはまず、病気になっていないか、病気の予兆はないかなど、定期的に歯科でチェックし、歯垢・歯石の除去を中心に口内を清浄にするケアを行いましょう。
患者様ご自身による毎日のケアももちろん大切です。当院ではより良いセルフケアをアドバイスしています。
若いうちから口腔内環境を保つ大切さ
欧米の歯科先進国では予防意識が高く、痛くなる前に歯科医院に行くことが常識となっています。例えば歯科先進国のスウェーデンでは、8割の方が定期的に歯科を受診しているのに対し、日本は1割以下です。
その結果、スウェーデンの80歳の方は、20本以上もご自身の歯を維持しているという調査結果があります。日本の80歳の方では約12本と、歴然とした差が出ています。
口腔機能の維持が、認知症や誤嚥性肺炎など他の部位の病気も予防し、口の健康が全身の健康につながっていることが研究によって明らかになってきています。
将来にわたって歯と健康を守り続けるためには、若いうちから定期的に歯科医院でプロのケアを受けて、良い口腔内環境を維持することがベストです。
プロフェッショナルケア
毎日の歯磨きだけではどうしても落としきれない歯の汚れと、
防ぎ切れない病気に対しては、プロのケアが有効です。
プロフェッショナルケアとは
虫歯や歯周病を引き起こしているのは、口内の細菌です。細菌は健康な状態でも存在していますが、清掃が不充分だったり免疫力が低下したりすると、バランスが崩れて急激に増加します。
とくに口内に残った食べカスは細菌の温床となって、歯垢としてこびり付きます。歯垢のような細菌の膜状の集合体はバイオフィルムとよばれ、ネバネバと強力に粘着し簡単には落としにくいという特徴があります。排水溝の汚れなどと同じ現象です。
歯科医院では、歯磨きだけでは完全に除去できないこうした汚れを、専用の器具で徹底的に清掃します。
病気の早期発見・早期治療のための定期検診と、フッ素塗布などの予防処置も定期的に利用していただきたいプロのケアです。
プロフェッショナルケアの治療
当院ではさまざまなプロフェッショナルケアで、患者様の良い口腔内環境を維持するお手伝いをしています。
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定期検診
定期検診では、歯と歯肉、粘膜に異常がないかチェックします。虫歯や歯周病などの病気は、初期段階で治療すれば体への負担が少なく、処置も簡単なもので済みます。 とくに異常がない場合でも、歯垢の付着を確認し除去します。染め出し液を使用することもあります。定期健診は、患者様の口腔内の状態により、毎月または数か月ごとにお越しください。
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PMTC
PMTCは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略称で「プロによる専門の器具を用いた歯の清掃」を意味します。 歯磨きだけでは、汚れの6割程度しか除去できません。落としきれなかった蓄積汚れは、PMTCでリセットしましょう。PMTCでツルツルにした歯には、汚れが付着しにくいというメリットもあります。
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フッ素塗布
フッ素は歯の再石灰化を促進し、歯質を強化します。歯の表面の微細な傷は修復してしまうので、ごく初期の虫歯であれば塗布して治療できます。 歯科医院では、クリーニング後の歯に高濃度のフッ素を塗ります。定期的に行うと、効果をキープできます。虫歯になりやすいお子さまの乳歯にも、施術することができます。
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シーラント
食べ物のカスが溜まって虫歯になりやすい奥歯の溝を、プラスチックの樹脂で埋めて予防する処置がシーラントです。「6歳臼歯」とよばれる永久歯が生えてきた段階で多く実施されますが、乳歯の段階でも処置が可能です。
シーラントは永久的な処置ではなく、樹脂が劣化して外れることもあるので、歯科医院で定期的にチェックしましょう。 -
歯みがき指導
虫歯・歯周病予防には、毎日の歯磨きが肝心です。よく磨いているつもりでも、患者様によって、汚れが溜まりやすい部分や磨き方の癖があるものです。歯科医院では染め出し液で汚れを確認しながら、歯ブラシの動かし方や力加減など、しっかりと病気を予防するためのより良い磨き方のご指導をさせていただきます。
SRPとは
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)とは、専用の器具を使用し、
歯石や歯垢を除去する、歯周病の初期段階における治療です。
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スケーリング
スケーリングは、スケーラーという器具を使って、歯の表面の汚れを除去する施術です。細いフックのような形状をしていて、歯間や歯周ポケットなどの狭い隙間に溜まった汚れをしっかり取り除きます。歯垢が石灰化した歯石は、歯にこびりついて一体となりますが、スケーリングでは歯を傷つけずに歯石だけを落とすことができます。
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ルートプレーニング
スケーリングのあとの歯の表面は、ざらついているので、このままだと歯石が再付着しやすい状態です。また歯根には、歯垢によって汚染・軟化したセメント質や象牙質が付着しています。キュレットという器具を使ってそれらを除去し、歯の根を滑らかに仕上げます。痛みの強い方の場合には局所麻酔をかけて対応することもできます。
セルフケア
日常のセルフケアに気を配り予防に努めると、
歯科治療で回復した健康な状態を長く維持し続けることができます。
セルフケアとは
歯科医院でのプロフェッショナルケアと、ご自宅でのセルフケアが、歯の健康を維持する両輪です。
セルフケアのポイントとなるのは、歯垢の除去です。虫歯や歯周病の原因となるのは、口内細菌です。食後、口の中に残った食べカスは歯垢となり、細菌の温床になります。口内の汚れは、細菌が増殖する前に清掃して、歯や歯肉へのダメージを防ぎましょう。
歯磨きだけでは約6割の汚れしか落とせないので、そのほかのデンタルケア用品も活用してください。歯と歯の間には歯間ブラシやフロスを、歯と歯肉の境目の清掃にはタフトが便利です。マウスウォッシュで仕上げると効果が長持ちします。
歯や歯肉が弱っている方には、液体歯磨きもおすすめです。
セルフケアの種類
セルフケアに役立つデンタルケア用品をご紹介します。しっかり清掃できると、虫歯・歯周病予防はもちろん、口臭も防止できます。
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歯磨き
食事のあとは、口内に糖質が残留するので、細菌も活性化します。歯垢を形成して、歯や歯肉にダメージを与える前に、歯磨きをしてしっかり清掃しましょう。噛み合わせの溝、歯間、歯と歯肉の境目には汚れが溜まりやすいので、丁寧にブラッシングする必要があります。歯並びが悪い部分や被せ物がある箇所も、よくチェックしましょう。
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歯間ブラシ
歯ブラシが届きにくい歯と歯の間は、歯間ブラシを使って、掻き出すように清掃します。歯間ブラシはブラシ部分が金属のタイプや、シリコンなどゴム製のものがあります。持ち手の形も真っ直ぐのものやL字型のものがあり、ブラシの太さにも種類があります。ご自身に合ったタイプを選んでください。狭すぎる歯間には無理に使わず、フロスを活用しましょう。
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タフト
タフトとは、毛束が1つだけのスモールヘッドの小型歯ブラシです。歯間や歯と歯肉の境目など、通常の歯ブラシでは届きにくい狭い隙間の清掃に特化しています。歯ブラシで磨いた後に、磨き残しが気になる箇所をタフトでブラッシングします。歯並びの悪い方や矯正装置を付けている方には、とくにおすすめです。
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フロス
歯と歯が接している部分は、歯ブラシだけではきれいにしにくいので、フロス(デンタルフロス)を使用して、隣り合う歯の両面を清掃します。フロスは細い繊維を束ねて1本の糸状になっていて、汚れを繊維に絡めて取ることができます。歯肉炎を起こしている場合は血が出ることもありますが、使い続けると炎症は治り改善します。
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マウスウォッシュ
デンタルリンスや洗口液などともよばれています。ペースト状の歯磨き剤よりも狭い隙間に行き渡ります。ただしマウスウォッシュですすぐだけでは、口の中の汚れを完全に落とすことはできないので、歯磨きの補助として使用してください。口臭予防に特化したもの、フッ素が配合されているものなど、必要に合わせて選びましょう。
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液体ハミガキ
一般的なペースト状のものとは違い、液体タイプの歯磨き剤もあります。口に含んで行き渡らせて、歯磨きを行います。液体歯磨きは研磨剤を含んでいないので、歯質や歯肉が弱い場合でもダメージを与えずブラッシングできます。有効成分を口内に残すために、水ですすぐ必要がない製品がほとんどです。非常時にも活用できます。